Japan Craft Book  project

vol.18 画家と創るアートブック

先日、ある方から、「あなたのニュースレターを読んでいますが、なんだか新興宗教みたいですね」と言われました。

確かに、『神様』という言葉を多用していますので、そう感じられる方もいらっしゃるだろうなと思いました。

日本人が持っている、八百万の神に自然と手をあわせる心、『畏怖の念』のようなものを表現したい、それを本づくりの柱としたい、と思っているのですが、言葉で伝えるというのは本当に難しいですね。

そういえば、湧きに湧いたWBCでも「野球の神様」という言葉がたびたび聞かれましたが、こういったときに「神様」が出てくるのは、やはり日本人ならではでしょうか。

(篠原紙工さんにて。紙の厚さや大きさを細かに検証。ほんの僅かな違いが本の存在感を変える)

   さて、ようやく1冊目の本が色校正まで進みました。タイトルは何度かお伝えしている『神迎え』です。当初予定していた、焼火神社の縁起を題材とした『御神火』より先に、隠岐島前神楽の世界を描いた本をまずは完成させることになりました。
ちなみに神楽とは神様に奉納する歌舞のことで、ルーツは、神様を迎える場「神座」において神々に神意を尋ねるために行った祭りです。現在はシャーマニック的な要素はほとんど見られなくなりましたが、それでも隠岐島前神楽には、その空気感のようなものが色濃く残っていると感じました。

「聖なる山の頂きへ神々を迎え入れる今宵、 踊るや踊る 謳え響け 愉悦一つになる」
という一文から始まる、神様と人がともに舞い戯れる特別なひとときへ皆様をご案内したいと思います。
そして、その世界を本にするのに欠かせない、大きな要素となるのが「絵」です。冒頭のくだりではありませんが、どれだけ言葉を尽くしても伝わらないものがあります。清澄な空気が漂う中、次々と神々が舞い降りる様子を、画家・水野竜生氏が今回見事に描いてくださいました。

実は、Japan Craft Bookを構想した段階から、絵は画家の方にお願いしたいと考えていました。
弊社には日本近代文学館編の名著複刻版シリーズが100冊ほどあるのですが、明治、大正、昭和初期ぐらいまでは、本の装幀や挿絵は画家が担っていたのです。
1冊1冊に作家と画家の魂がこもっており、実に美しく、創意に満ちています。これらの本には香りも温もりもあります。そういう本をつくりたいと思っていました。
私が感動したタラブックス(インド)の『夜の木』も、まさにそうでした。

そして『神迎え』は、大人の絵本というのともちょっと違う、アートブックともいうべきものに仕上がっていると思います。

(弊社オフィスで名著復刻シリーズを展示したときのものです。
 高校生の男の子が「めっちゃイケてる」と、興奮しながら手にしていた姿が実に印象的でした)

ここで水野先生の簡単なご経歴を紹介させてください。

水野竜生 (みずの・りゅうせい) 
1964年 新潟県柏崎市生まれ
現在、東京と柏崎のアトリエにて制作

【経歴】
2004~2010 2004 年上海に、2007年北京にアトリエ開設、日本とフランス、中国を拠点に制作
1991~1993 パリから定期的に上海に通い、3人の先生に水墨画技法を学ぶ
1990~1997 パリを拠点に制作
1990 グランド・シュミエール、エコール・デ・ボザールで 油彩を学ぶ 
1989 東京藝術大学美術学部日本画科卒業

【受賞】
2004 上海春季芸術サロン青年優秀芸術家栄誉賞受賞
1996 アーティスト・コンテンポラン・フランセ・ア・ストックホルム1996栄誉賞受賞 
1992 テーラー財団Finez-Pland賞受賞(パリ)
1992 ル・サロン栄誉賞受賞(パリ) ル・サロン会員に推挙

あの焼火神社で描かれた色鮮やかな10メートル作品と、今回の水墨画の違いに、「同じ作家なのですか?」と尋ねられることが度々あるのですが、このご経歴からおわかりいただけるかと思います。
楽しみにお待ちいただけますと幸いです。
なお、インスタグラムで取材の様子などをご覧いただけます。
https://www.instagram.com/japan_craft_book/

後追いでアップしておりますので少々違和感があるかもしれませんが、写真から感じていただけるものがあると思います。ちなみに、写真はデザイナーの谷さやさんによるものです。

Japan Craft Book プロジェクト 
代表 稲垣麻由美

 

ーつづくー

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