Japan Craft Book  project

vol.32 試作版を抱えてフランスへ。

先日、弾丸3泊5日でフランスに行って参りました。
目的はフランスで画廊を経営してる方や、アート関係者にお目にかかり、お話を伺うことです。

(パリ日仏文化会館 エッフェル塔のすぐ近くにあり、規模の大きさに驚きました。様々な日本の匠の展示が定期的に行われています)

というのも、「和紙を使ったアートブックを作っている」と色々な方に話をしていると、

「それ、フランスに持っていくといいよ。日本人はアートにお金を出さないから」

「海外で販売すべきだよ」
など、ありがたいアドバイスをたくさんいただきます。

それが1人や2人ではなく、10人を軽く越えたあたりから、
これは自分のセンサーで確かめたい、と思うようになったのです。

コロナ後のフランスはどうなのか。きな臭いものが漂い始めた今、イメージだけではなく、肌で何かを感じ取ること。

そして、それを制作途中で感じ取っておくか、
完成させてからどうするかを考えるかでは、大きな違いがあるように思いました。

とはいえ、たった数日フランスにいただけでは、当然何もわかるはずありません。
ただ、感じたのは、フランスと日本の色彩に対する感覚の近さ。

「グレー」の絶妙なトーンで品良くまとめられているデザインを方々で見かけ、それはまさに日本人が「鼠色」を浅葱鼠 鳩羽鼠 利休鼠 薄墨色 石板色 などと言って、見分け、使い分け、そして、バランスよく融合させているのと同じでした。

繊細な感性に共通点を見出すのと同時に、石造りの街で、壁面にも天井にも装飾を施す足し算の文化と、木造建築、余白の美を追求する引き算の日本の文化の対比は実に興味深く、互いに惹かれ合う文化を持っていることを実感として得ることができました。

ただ、そう単純なことではなく、現地に長く暮らしている日本人のアート関係者、レストラン関係者に、実際に試作品をご覧いただき、いろいろなお話を伺えて、とても参考になりました。

書道も華道も茶道もそれなりに人気はあるけれど、フランスだって、多くの一般人は物価高に苦しみ、家賃がどんどん高くなり、余裕のない生活を送っているのは同じ。
そして、日本といえば、いまや完全にアニメの国と思われている中で、単に日本の伝統工芸というだけでは売れないという現実を、しかと受け止めてきました。

私の結論としては、世界の方に手にとっていただけるよう、英訳をつけて制作するけれど、まずは、日本人に手にとってもらいたい。それなしには世界に目を向けられない、と逆に強く思って帰ってきました。

Japan Craft Bookの活動が、
日本の伝統工芸にわずかながらも寄与するものになる、を最初に掲げ、ホームページにわざわざ

<このプロジェクトの提供価値と期待される波及効果>

と書いた原点に立ち返る機会ともなりました。

(形になってきました。こちらが書林版の見本です。)

そして、より皆さまに手にとっていただきやすいバージョンとして作成したものが、こちらの「書林版」です。
掌にのるサイズで、表紙は手漉き和紙、本文は鳥の子和紙にすることでコストを抑えました。


書林とは、書物がたくさんあるところ。すなわち、書店・書房を意味します。
「特装版」に対して、「普通版」とご案内するのも、あまりに味気なく、「書林版」としました。

多くの方に届くように、という願いも、この「書林」の2字に込めています。

最後に、こちらはシャルル・ド・ゴール空港、出国ロビー内の様子。長く面倒な出国手続きを終えて、ぱっと視界が開けた一等地にあるのが、この回転寿司カウンターでした。

くるくる回るお寿司にシャンパンかと思いきや、多くの方がアサヒスーパードライと、日本酒の松竹梅を愉しんでおられ、大人気スポットでした。

様々な国籍の方が楽しそうに舌鼓をうっておられる様子を眺めながら、厳しい現実もきちんと受け止めつつ、一方、なんだかとても明るい気分になって帰国したのでした。

さて、これが本作りにどう影響するのか……。

今号もありがとうございました。

Japan Craft Book プロジェクト 
代表  稲垣麻由美
official@japancraftbook.com

ーつづくー

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