Japan Craft Book  project

vol.60 人生を変えてくれた大切な人

誰にでも、「この人に出逢わなければ、今の自分はなかった。」
そういう出逢いがあるでしょう。

年齢を重ねるほどに、その出逢いの尊さをより感じるようになりました。
そして、そんな出逢いはいつも思いがけないタイミングで、
そして、絶妙なタイミングでやってきます。

私がこのJapanCraft Book projectを始めるきっかけを作ってくれた
大切な友人が先日、永眠しました。
まだ37歳。西窪彩恵さんといいます。

彩恵さんと最初に出会ったのは2020年の9月のことでした。
友人が経営する地豆を扱っている「マメコト商店」(鎌倉)で買い物をしていたら
店内で同じようにあれこれ豆をたのしそうに選んでいたのが彩恵さんでした。
店主がポロッと私に「この方ね、先日までチベットに行ってたんだって」と話してくれたのです。
それに、「えーそうなの!!!!!」と反応したのが私です。

実は、私はちょうどその1年ほど前から縁あってチベット仏教を学び始めており、
その時、行ってみたい場所No.1がチベットだったのです。
「もしご迷惑でなければ、チベットのことを詳しく聞かせて欲しいんだけど、
この後、うちのオフィスに遊びにきませんか?」
と誘ったのが運命の始まりです。
そのお店からオフィスまで歩くと20分くらいですが、いくら厚かましい私でも
初対面の方にこんなナンパ?をすることはそうありません(笑)。

その頃の彩恵さんはフリーランスで仕事をしていてとても忙しかったはずなのに
一つ返事で「はい。伺います」とにっこり笑って答えてくれたのです。

そして、その彩恵さんがオフィスに抱えてきてくれたのが、
私がこのプロジェクトの話をさせていただくときに、必ず冒頭に出てくる
『夜の木』という絵本でした。

彩恵さんが開口一番、私にこう言いました。
「直感なんですけど、稲垣さんはこういう本がお好きなのではないかと
思ったものですから」と。
その時の衝撃を、私は後にこんな風に記しています。
https://japancraftbook.com/column/washi-book/


その頃、商業出版の企画編集に長く携わっていた私は、
正体不明のモヤモヤを抱えていました。
ありがたいことにヒット作に恵まれても、どこか満たされないものを感じ、
「美しい本を作りたい」という漠然とした思いはあったのですが、
そもそも「美しい」とは何かがよくわからない。
見た目が綺麗な本は巷に溢れていますが、心揺さぶられることもありませんでした。

ですが、目の前に突然現れたその「美しい」絵本は、ただ美しいだけでなく
とてもあたたかく、そして何より「欲しい」と思ったのです。

『夜の木』は、
インドの神様(木の精霊)の物語を、インドの再生紙に綴った、完全手製本です。
それが、世界的ベストセラーになっており、今も重版を続けています。

「あ・・・そうだ。私も
日本の神様の物語を、日本独自の紙に綴った本を作りたい」
と、 電気が走ったように思いました。

結局あの時、彩恵さんとはチベットの話はあまりせず、
タラブックスの本作りについてずっと話していた記憶があります。

その後、彩恵さんは私の思いに共感してくれ、プロジェクトを応援し続けてくれることになります。
メールマガジンを発行して、「制作の過程を多くの人に知ってもらいましょう」と提案してくださり、
実際にその手続きをしてくれたのも彩恵さんです。
本ができた時も、一番最初にお金を出して購入してくれたのが彩恵さんでした。

私の人生を変えてくれた大恩人です。
https://inagakimayumi.net/special-report
(彩恵さんが描いてくれた記事がここに残っています)



彩恵さんとのお別れはあまりに突然でした。
ご祖母様の法事で長野にご家族と帰省していて、
「明日はお蕎麦屋さんと温泉に行こうね。おやすみ」といつもと変わらぬ会話を交わしたのに
翌朝、眠りについたそのまま、優しい顔で息を引き取っていたのだそうです。
苦しんだ形跡はどこにもなかったとお母様がお話してくださいました。

神様は時に理屈を超えて不思議なことをなさるようです。
魂が美しい人は、この世での修行を早めに終えるようになっているのでしょうか。

ご家族の心中を思うと、言葉になりませんが、
ここで、私は彩恵さん「ありがとう」と何度でも伝えたい。
あなたから、たくさんの優しいギフトをいただきました。

下の写真は、『神迎え』の試作品がようやく完成したときに、彩恵さんも一緒に篠原紙工さんに
同行してくれ、記念に撮影したものです。(後ろの向かって左端の女性が彩恵さんです)


彩恵さんはよく、
「いつも、麻由美さんは仕事ばっかりしてますよね。ダメですよ」
と言ってました。
それと同時に「次のクラフトブックは、どうするんですか?」とも。

次のクラフトブックを出すことに諦めに近い気持ちを持つこともこの頃あったのですが、
またこの大恩人に新たなスイッチをいただいたような気がしています。


Japan Craft Book プロジェクト 
代表 稲垣麻由美

プロジェクトへの想い:
https://japancraftbook.com/about/

『神迎え』書林版:
https://japancraftbook.com/books/kamimukae-shorin/
『神迎え』特装版:
https://japancraftbook.com/books/kamimukae/
Story Book「掌に美しい日本を奏でる 第一章」:
https://japancraftbook.com/books/holding-the-beauty-o-japan/

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